私のところに愛犬の行動をご相談いただく際に、既に愛犬が様々な疾患を患っているケースは少なくありません。
その中でも、「腎疾患」を患っているケースは意外に多い印象です。
そこで今回は、「愛犬が腎疾患を患っている飼い主様」、または「現在愛犬は腎臓に問題は無いが予防したい飼い主様」に向けて情報をシェアしていきたいと思います。
以下の情報は、主にオランダ在住のホリスティック獣医師からお聞きした情報や分子栄養学(オーソモレキュラー)の情報を記載いたします。
・毒素による負荷
・食餌療法 / ワクチン接種による自己免疫反応
・慢性的な脱水症状
腎臓問題の主な原因
1.毒素による負荷
犬や猫は、人よりも圧倒的に地面と顔が近いため、私たち人間よりも圧倒的に早く有毒物質と接触する可能性があります。
例)環境汚染物質、農薬、食餌を介した毒(BHA、BHT、エトキシキンなど)、医薬品(特に鎮痛剤)、ワクチンの中の重金属
2.ワクチン接種による自己免疫反応
ここでは詳細な説明を省きますが、ワクチンを接種することで自己免疫反応により、腎臓を誤作動で攻撃してしまい、負荷がかかることがあります。
3.慢性的な脱水症状
動物は、主に食べ物からも水分を補給します。
犬のドライフードは、水分含有量が低すぎることで、普段から積極的に水分を補給しない個体は脱水気味になりやすくなります。
脱水症は、臓器への血流の減少に繋がります。腎臓は機能するために大量の血液を必要とするため、脱水症の影響を受やすいです。
主な診断方法
腎機能障害を検査するためには、血液検査で「尿素」と「クレアチニン」の数値をみることで判断することが出来ます。さらに、尿比重やリンの血中値も参考となります。
最近では、「SDMA」も重要な指標であると考えられています。上記の検査では、腎機能の7割ほどが損傷しないと数字に出てきにくいと言われていましたが、「SDMA」では3割あたりの機能が損傷することで数字としてあらわれると言われています。
※クレアチニンは、筋肉組織の最終代謝産物です。ローフード(生肉食)を実施している犬は、クレアチニン値は通常より高くなる傾向があります。そのため、クレアチニン以外の項目も含めて診断する必要があります。
腎不全の食事
タンパク質が腎臓に悪影響を及ぼすといった仮定により、多くの場合「腎臓サポート」といった低たんぱく食を推奨されます。
タンパク質制限を行うことで、尿毒症の原因となる窒素代謝産物の生産を抑制するなどの理由で、タンパク質制限が有効であるとされていました。
但し、このようなタイプの食事(低たんぱく、低リンなど)は、聞こえは良いですが、いくつか留意する点があります。
例えば、「コーンスターチ、コーングルテン、タンパク質加水分解、動物性脂肪、ビートパルプ」などは、いわば既に加工したものの廃棄物を再度集め、加工し直したものです。そのため、消化率が悪くなる傾向があり、腎臓がろ過するための老廃物が多くなる傾向があります。
これでは、本末転倒であると言えるでしょう。
他にも、分子栄養学の観点からは「腎不全であったとしても積極的に良質なタンパク質を接種する必要がある」と考えます。
人間の医師である藤川氏は「腎臓という臓器自体がタンパク質であり、腎臓の組織は絶えず壊され作り直されている。腎臓の組織を作り直すときに、タンパク質といった材料が不足していると、機能が低下した腎臓になってしまう。腎臓は毛細血管の集まりであり、血管壁のコラーゲンを強くするために、タンパク質とビタミンは必須である。」と提言しています。
また、「もし、タンパク質制限食をつづけている腎臓病の人で、倦怠感、むくみ、脱毛などが見られる場合は、どれも低たんぱく食に原因がある可能性が高いと共に、タンパク質よりも糖質過剰の方が腎臓に負担をかけている」と藤川氏は考えています。
以上から、腎不全の犬であったとしても、タンパク質の「質」を十分に考慮したうえで、必要量は満たす必要があると言えます。
かかりつけ獣医師とも相談しながら、良質な低たんぱくのドックフードとともにアミノ酸スコアが高いタンパク質を摂取することが好ましいと考えることが出来ます。
※但し、血液検査を適宜行うことにより、現在の食生活が正しいか確認作業を十分に行う必要があります。
アミノ酸スコア(プロテインスコア)
栄養面的には、腎疾患を患う犬も健康な犬も共通して、生物学的価値の高い(アミノ酸スコア、プロテインスコア)タンパク質を接種することが非常に重要であると考えられています。
※アミノ酸スコアが低ければ、尿毒症毒素の生産を促進させると言われています。
例えば、卵はアミノ酸スコア、プロテインスコアともに100%であり、非常に有用な食品であるため、お勧めの食材です。
その他の対処法
「腎臓の問題の主な原因」にも記載の通り、まずは意識的に十分な水分を愛犬に摂取させることが重要です。
食餌に水分を含ませることもお勧めです。
また、魚に含まれるオメガ脂肪酸は治癒効果とサポート効果があるため、新鮮な魚やサプリを提供することもお勧めです。
この他にも、ワクチンに関しては極力「抗体検査」を実施し、抗体があるようであれば接種しないように工夫することも有用であると言えます。
予防
・良質なブリーダーから子犬を迎える
・予防接種には充分気を付ける
・食餌は、ローフード(生肉食)が好ましい。ドライフードの場合は、原材料を確認し十分に注意する。
・家や庭で化学薬品の使用を控える。
・ノミとり、蚊よけの薬は自然由来のものを使用する。
〈引用文献・参考文献〉
1.Dierenartsenpraktijk Bio Mentor(2019), Nier, Dierenartsenpraktijk Bio Mentor
https://www.biomentor.org/
2.IDEXX(2021), IDEXX SDMAのご利用方法,IDEXX
https://www.idexx.co.jp/ja/
3.藤川徳美(2019),すべての不調は自分で治せる,東京都,方丈社
4.Hoffer. A. &Saul. A.(2008),Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians ,North Bergen, Basic Health Publications